空間演技
【劇団『空間演技』】
1970年 設立 <作品は発表順>
『トンテんトン』
『ひゅうらひゃあら』
『はためくは赤き群れらーお菊の章』
『はためくは赤き群れらー魂よばいの章』
『バトンタッチ』
『アンタッチャブル』
『はためくは赤き群れらー零の章』
『倭人伝』
『成吉思汗あるいは義経記』
『倭人伝外伝』
『海と組織』
『新撰組異聞ーわれ心情の翼にのりて』
『創生記』
『牙よただ一撃の非情を生きよ』

◎1978年8月18日付け・週間朝日 演劇界に静かに浮上してきた「空間演技」

衝撃的、というのではない。挑戦的、というのでもない。それは、静かに、確実に浮上してきたといえる。60年代派ーあの鬼面人を驚かす紅テントをひっさげて登場した「状況劇場」唐十郎のデビュー。彼に代表されるアングラ・小劇場運動に続いて、70年代は当代の人気者・つかこうへいのブームである。しかしそれ以降、新しい才能という点では、ちょぴりさびしい光景が続いてきた。が、それがようやく変わってきたのが、ここ1、2年。いくつかの気鋭劇団の舞台が、急速に評価を高めている。久々に大型の才能が登場した、という声も出はじめた。派手な話題こそ呼んでいないが、確実に才能の手ごたえを感じさせる舞台だ。いかにも静かな登場ー。だが、それこそ70年代的な特徴でもあるのではないか。なかでも、大型の実力派と評判なのが、昭和20年九州生まれの劇作家・岡部耕大と、彼が率いる劇団『空間演技』だ。九州弁をふんだんに使って、エネルギッシュで、さらりとした叙情にとんだセリフを書きこんでいく岡部の迫力と、躍動的で男っぽい俳優たちが、この劇団の魅力だ。彼は、映画監督の岡本喜八に師事したというだけあって、喜劇的なセンスはいいし、劇画風のスタイルも目立つ。しかも全体としては、びっくりするくらい正統的な舞台だ。


◎1978年12月・流行通信・扇田昭彦
つかこうへいの登場以後、目ぼしい劇作家が現れなかった劇界に今年やっと魅力の新人が姿をみせた。

岡部戯曲の特色の一つは、作者創案の九州弁で繰り広げられることである。場所もほぼ一定していて、松浦という名の架空の地である。そこに生きる庶民の群像が太いタッチで描かれていくが、松浦がかつては産炭地として栄え、いまは無残にさびれ果てたという設定から、岡部の作品には必然的に社会的な視野が広がる。

松浦の栄光と没落は、石炭から石油へ転じた国家のエネルギー製作に関わり、その角度から、この地の変遷のありさまは、近代国家としての日本の推移に深く関係するからである。こういう広い透視図のうえに、兄妹心中に追い込まれていく男女を中心に展開したのが『肥前松浦兄妹心中』という力作で、素材、テーマ、そして言葉が一体化した秀作だった。社会に対する批評の眼と、秀れた言葉の感覚とを併せ持った岡部耕大の登場は、今年の大きな刺激であり、収穫であった。今後をおおいに期待したい。

『日輪』
『さすらいよーあれがぼくの風だ』
『松浦今昔物語』
『命ででん傳』
『精霊流し』
『キャバレー』
『修羅場にて候』

◎1981年5月・毎日新聞
閉塞状況の若者を描く
なぜ若者たちは暴力に走るのかー社会の底流でどす黒く渦巻く“怒り”を、舞台に託して噴出させようという、岡部耕大作・演出の力作である。東京のとあるボクシング・ジム。この演劇空間には、本物そっくりのリングが作られ、その中、あるいは周囲を十分に活用して、ドラマは進行する。劇画的な場面、叙情的なセリフを織り交ぜて、観客を引き付けていく手法を手際がいい。現代社会の、外側からではうかがい知ることができない部分を、内側から照射することに成功した佳作である。

◎1981年6月・読売新聞
自前で一か月公演に踏み切ったのは、劇団「空間演技」で、東京・新宿のカフェテアトロ・新宿もりえーるで「修羅場にて候」を上演した。
冒頭の若者たちのシャドーボクシング・シーンは、やり場のない怒りをたたきつけて感動的であった。

『冬と刺青』
『誠忠義心伝ー元禄赤穂殺人事件』
『どんっ』
『ラガー』
『松浦党志佐三郎の反乱』
『悲しき狙撃手』
『風の墓』

◎1986年12月・読売新聞
青春の勢い「風の墓」
シアター・ビッグヒルで上演した「風の墓」(肥前高校剣道部物語)は、活力溢れる舞台だ。死後と化した感のある「青春」という言葉こそがふさわしい。岡部がこだわりつずける肥前松浦。変革の希望を持った青年たちの背後で、田舎の高校生の生命力溢れる青春が躍動する。岡部の前では、軟弱な現代の若者たちの芝居は吹き飛んでしまう。なにより勢いを感じた。

『力道山』

◎1987年12月・読売新聞
「力道山」(まだ観ぬ蒼き貌の人)も昭和30年代の庶民を描いて秀逸である。敗戦後、その鬱屈した国民感情を吹き飛ばすかのように登場したヒーロー力道山。その力道山に重ねて、引き揚げ者一家の“家長交代”を軸とした時代状況が描かれる。選挙に象徴される戦後民主主義の問題であり、その背後にある天皇制の問題であり、父権の問題である。さほど遠くない時代が歴史になろうとしている今、岡部のいわんとするところは貴重である。

◎1987年12月・朝日新聞
「力道山」(まだ観ぬ蒼き貌の人)は、せりふのすべてが肥前松浦の言葉で構成されている点ひとつを取っても日本の文脈を意識していた。加えて、この劇は、昭和をより現代に近い30年代から見直す意識が鮮明で注目に値した。

『天敵ー新宿どん底物語』
『闇市愚連隊』
『籠城』

→空間演技オフィシャルサイト