公演写真
精霊流し
2023年8月5日(土)
めぐろパーシモン小ホール


チラシ表(PDF)    チラシ裏(PDF)


舞台は1980年8月日の九州肥前松浦。
夕暮れ、東京で不倫の末、恋に破れた「女」が死に場所を求めて故郷へ戻って来る。自殺未遂で収容される古びた旅館が舞台。旅館を営む「おばば」は、終戦の日の8月15日、不義の子を死なせた想い出に生きている。
「女」と「おばば」の間で、それぞれの思いをこめたモノローグすれすれの会話が交わされ、「女」は次第に生きる力を取り戻していく・・・。
時代よ、逞しくあれ。

「精霊流し」は、日本の男とその時代を描くことを得意とする岡部耕大が、小劇場運動が盛んだった1980年に発表した女性2人だけの作品です。
すでに初演で「印象的なセリフ。何度も上演されてしかるべき作品」と読売新聞の劇評で絶賛されましたように、その透き徹った夕闇から黄昏の風景をバックに女性二人だけの紡ぎ出すような台詞の数々は演劇評論家衛紀生氏をして「演劇史に残る、とっても名作です」といわしめた作品です。
 台詞が持つイメージの劇世界。本来、「演劇は言葉の芸術であったのだ」と頷かせるに充分な内容です。そう、これは朗読劇に近い。
 それは、作・演出の岡部耕大もいうように、火のように激しい女の情念をうちに秘めながらも、淡々と自殺未遂の若い女性に自らの戦争体験と若い過去を笑いながら語り「それでも生きるのだ」という。おばば"は、この時代に生きている人たちの胸の奥の奥までも迫り、力強く生きろと励まします。
日本人は、今こそ人間の時代を取り戻さなければ取り返しのつかないことになるのではないでしょうか。

演劇は人間と人間との出会いを生みます。小劇場運動が盛んだった最中に、敢えて逆らうように上演されたこの人間ドラマが、「もう一度人間の時代に還れ」とでもいうように、静かに浮上しました。すでに各地で再演が重ねられ絶賛されてきました。
 今、日本人は静かにではありますが、それでもどこか激しく「人間でありたい」と切望しているのかもしれません。上演された各地での観客の反応がそれを如実に教えてくれます。ピアノが奏でる童謡のメロディーで幕が開くこの一幕物の夏芝居は、その瞬間から咳払いや物音一つない静かな闇の世界が訪れるのです。「おばば」と「女」の絶妙の会話に笑い泣き、それでもだれもが透き徹った8月15日の夕暮れの風景に身を委ね、そこに誘われるのです。
 それはそこに戦後の日本人の原風景があるからでしょう。名作といわれる所以です。



[作・演出] 岡部 耕大

[出演] 桜子 萩野 道子

◇公演スケジュール
2023年8月5日(土)
18:00開場 18:30開演

◇公演会場
【めぐろパーシモン小ホール】 定員200/東急東横線「都立大学駅」下車7分


チケット取扱い
全席自由 \5,500(前売り\5,000)
オフィスnekogoroホームページ特設サイト



[主催] オフィスnekogoro [協力] SAKURAKO CLASSICS / 岡部企画